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名古屋家庭裁判所 平成6年(家)22号 審判

主文

被相続人の相続財産である別紙目録記載の預金のうち、500万円を申立人X1に、その余を申立人X2にそれぞれ分与する。

理由

本件各申立人は、それぞれ被相続人の特別縁故者として自己に対し被相続人の相続財産を分与する旨の審判を求めているので、検討するに、本件各記録、当庁平成4年(家)第×××号、同第××××号、同第××××号、当庁平成5年(家)第×××号、当庁平成6年(家)第××××号各事件記録及び当庁家庭裁判所調査官による各調査の結果によれば、以下の事実が認められる。

(1)  被相続人は平成3年12月16日に死亡したが、相続人のあることが明らかでなかったので、平成4年7月21日に相続財産管理人が選任され、そして、同年8月3日に当庁掲示板に提示し、また、同月14日付けの官報に掲載して管理人選任の公告がなされた。

(2)  上記公告があった後2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったので、管理人は、平成4年11月5日付けの官報により、一切の相続債権者及び受遺者は翌日から2か月以内に請求の申出をするよう公告した。

(3)  前項の公告期間満了後も相続人のあることが明らかでなかったので、平成5年3月31日に当庁掲示板に掲示し、また、同年4月19日付け官報に掲載して、相続人があるならば同年10月31日までにその権利を主張するよう公告がなされたが、権利を主張する者はなかった。

(4)  管理人が処分、清算した後に残存する相続財産は、別紙 〈省略〉記載の預金である。

(5)  申立人X2は平成6年1月6日にその本件申立てをした。同申立人は被相続人の亡母の兄の配偶者であるが、被相続人がその亡父から相続して住んでいた土地と建物は、被相続人の亡父がこれを購入するに当たり、同申立人が夫と協力して代金の相当部分を融資してその取得を容易にしたものであり、また、同申立人は、夫と協力して、被相続人の亡父や被相続人が病気で入院していた際、医療費、家政婦代及び光熱費等の立替払いをするなどして生活の面倒を見た。

(6)  申立人X1は平成6年1月31日にその本件申立てをした。同申立人は、被相続人の近隣に住む者として、被相続人の両親が生存中から近所付合いをしていたが、知的障害者でだらしがなく、近所でも苦情の絶えなかった被相続人に対し、他の者らはかかわらないようにしていたが、同申立人は民生委員に働き掛けたり、おかずを持っていったり、お金を貸すなどしてそれとなく面倒を見てきたので、被相続人に対する生活保護の給付金も同申立人に預けられたりしていた。

以上によれば、本件申立人らはそれぞれ被相続人と特別の縁故があった者と見るのが被相続人の意思に合致するところであろうと考えられるので、被相続人との縁故の度合いを考慮し、主文のとおり審判する。

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